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第 7 架 応用 38 / 45

規制の動向 — 日本と世界

金融庁の監督体制と金商法への移管、米国 FIT21・CLARITY、EU MiCA、戦略的ビットコイン備蓄まで、日本と世界の規制動向。税金・確定申告は「ビットコインの税金」で詳述。

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記事概要

Bitcoinの通信は国境を意識しませんが、取引所も事業者も利用者も、法律の地図の上で動いています。

理解の手がかり

国境を越えて流れるインターネットの通信が、入口と出口では各国の検査を受ける。その姿を思い浮かべると、プロトコルと規制を受ける事業者を分けて考えやすくなります。

比喩の限界

規制は人・行為・事業・商品・法域ごとに異なり、たびたび変わります。この記事は一般的な教育情報であって、個別の案件への法的助言ではありません。

「Bitcoinは禁止か」という大きすぎる問いを、場所・行為・主体ごとに確かめられる問いへ置き換えられます。

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1主要な事実

本文の要点を、制度の段階(現行法・成立済み・未施行)がわかる形で先に示します。日付はいずれも2026年8月16日時点のものです。

主要な事実の比較表
論点2026年8月16日時点の状態
国内の根拠法資金決済法。暗号資産交換業は金融庁への登録制(2017年4月施行)
無登録営業の罰則資金決済法107条: 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)
金融商品取引法への移管2026年7月15日成立・7月23日公布。10月20日確認のe-Govでは暗号資産部分は未施行、施行日を政令指定として掲載(法律上の期限は2027年7月22日)
罰則の引上げ金商法の無登録業の罰則を5年以下→10年以下の拘禁刑、500万円以下→1,000万円以下の罰金へ引上げ(2026年8月12日に先行施行)。暗号資産の無登録業は移管規定の施行後にこの罰則の対象となる
税制国内の登録業者を通じた「特定暗号資産」の譲渡等に限り申告分離課税20.315%。適用開始は2027年か2028年の1月1日で未確定(詳細は「ビットコインの税金」)
ステーブルコイン2023年6月施行の改正資金決済法で、発行主体を銀行・資金移動業者・信託会社に限定
主な海外米国はCLARITY法案が上院で審議中(2026年9月15日に審議入りの討論終結採決が49対50で不成立)、EUのMiCAは2024年12月30日に全面適用、英国はSI 2026/102で2027年10月25日に本格施行

それぞれの根拠と例外は、以下の各節で扱います。

2金融庁(FSA)と登録業者制度

税金・損益計算・確定申告については、独立トピック「ビットコインの税金」で詳しく扱っています。本トピックは規制の枠組みに焦点を当てます。

日本は、暗号資産交換業者の登録制度を世界で最も早く整備した国の一つです(2017年4月の改正資金決済法)。

暗号資産取引所は金融庁の「暗号資産交換業」登録が必須です。無登録での営業は刑事罰の対象で、資金決済法107条は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)と定めています。金融商品取引法への移管規定が施行されると、無登録の暗号資産取引業は金商法の罰則(10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。2026年8月12日に5年以下・500万円以下から引上げ済み)の対象になります。

主要な登録業者(2026年時点)は、ビットフライヤー、Coincheck(マネックスグループ)、GMOコイン、bitbank、SBI VCトレード、楽天ウォレットなどです(DMM Bitcoin は2024年の流出事件を受けて事業を廃止し、口座と預かり資産は SBI VCトレードへ移管済みです)。

「暗号資産交換業等に関する内閣府令」「事務ガイドライン」で詳細な業務規程(顧客資産分別管理、コールドウォレット保管比率、ホットウォレット上限、AML/CFT 体制等)が定められています。

2018年のCoincheck NEM 流出事件(約580億円相当)を契機に、コールドウォレット95%以上保管義務などの規制強化が実施されました。

3ステーブルコイン規制(改正資金決済法)

2022年6月に改正資金決済法が成立し、2023年6月に施行されました。日本は G7諸国の中で最も早く、包括的なステーブルコイン法制を整備した国です。

電子決済手段(ステーブルコイン)の発行主体は「銀行」「資金移動業者」「信託会社」の3業態に限定されています。利用者保護を第一に設計された制度です。

発行会社には100%の裏付け資産を保有する義務があり、破綻したときには利用者が優先的に弁済を受けられる仕組みになっています。

国内のステーブルコインと関連基盤は次のとおりです。JPYC(JPYC株式会社が資金移動業者として発行する円建て、2025年10月発行開始)、JPYSC(SBI新生信託銀行が発行する国内初の信託型円建て、2026年6月発行開始)、USDC(米 Circle 発行のドル建て、2025年3月に国内取扱開始)等。なお Progmat Coin は銘柄名ではなく、株式会社Progmat(三菱UFJ信託銀行等が出資)が提供するステーブルコインの発行・管理基盤です。

USDC の国内取扱いは2025年3月に始まりました(電子決済手段等取引業者の登録は2026年8月27日時点で SBI VCトレードとコインチェックの2社)。日本円↔USDC↔USD のブリッジ決済が実用化しつつあります。

4金商法への移管と令和7年資金決済法改正(2026年)

2026年7月15日、暗号資産を資金決済法の枠組みから金融商品取引法(金商法)へ移す「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、7月23日に公布されました。暗号資産に関する部分の施行は、公布の日から1年を超えない範囲内で政令が定める日とされています。2026年10月20日に確認したe-Gov法令検索では、暗号資産部分は未施行で、施行日は政令で定める日として掲載されています。法律上の施行期限は2027年7月22日です。

改正の柱は3つです。第一に、特定の暗号資産について発行者や取扱業者に発行・取引の情報開示を義務づける開示制度。第二に、未公表の重要事実に基づく売買を禁じるインサイダー取引規制の適用。第三に、無登録業に対する罰則の引上げです。

このうち金商法の無登録業に対する罰則の引上げ(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金から、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金へ)だけは、先行して2026年8月12日に施行されました。暗号資産に関する移管規定の施行までは、無登録の暗号資産交換業には引き続き資金決済法107条(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)が適用され、移管後に10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金の対象になります。

移管は税制とも連動しています。申告分離課税の適用開始日は「金商法の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日」と定められているため、政令で指定される施行日によって課税ルールの切替時期も決まります(税制の詳細は「ビットコインの税金」を参照)。

移管とは別に、令和7年改正の資金決済法等が2026年6月1日に施行されました。柱の一つは「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の創設で、暗号資産交換業者等のサービスの媒介を行う事業者を、交換業とは別の登録業種として位置づけるものです。登録申請書の記載事項や利用者への説明・情報提供事項は、2026年5月22日に公布された内閣府令・事務ガイドラインで定められました。

もう一つは、利用者資産の国内保有命令の対象の明確化です。電子決済手段等取引業者・暗号資産交換業者に対して国内保有を命じることができる資産の具体的な範囲が定められ、海外への資産流出局面での実効性が高められました。

5トラベルルール

FATF(金融活動作業部会)の勧告に基づき、暗号資産の送金時に送受信者情報を取引所間で共有することを義務化する「トラベルルール」が導入されています。

日本では2023年6月から施行されています。金額の下限はなく、顧客の依頼で他の取引所の顧客へ暗号資産を送る取引所は、送付人の氏名・住所(または顧客識別番号)・アドレス等と、受取人の氏名・アドレス等を受取側の取引所へ通知する必要があります(10万円超の移転は別途、取引時確認の対象です)。

実装プロトコルは TRP(Travel Rule Protocol)、Sygna Bridge、TRUST(Coinbase主導)などが併存しており、取引所間の相互運用性が課題です。

セルフカストディのウォレット(MetaMask等、個人が自分で管理するウォレット)へ送金する場合は、受取側のアドレス情報をあらかじめ取引所へ提出する必要があります。

プライバシーの面では物議を醸す規制ですが、マネーロンダリング対策として国際的な標準化が進んでいます。

6米国 FIT21 / CLARITY Act

2024年5月、下院で「FIT21(Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act)」が超党派(賛成279 vs 反対136)で可決されました。

FIT21の骨子は、暗号資産を「商品(commodity)」と「証券(security)」に明確に区分することです。ビットコインは、CFTC(商品先物取引委員会)の管轄下にある商品にはっきりと分類されます。

SECとCFTCの権限の棲み分けも明確にします。長く続いたGary Gensler(SEC)時代の「regulation by enforcement」路線から、明確なルールを定める方向への移行を目指すものです。

2025年に政権交代後、後継法案「CLARITY Act(H.R.3633)」が2025年7月に下院を可決しました。上院では2026年5月14日に銀行委員会が賛成15・反対9で可決しました。2026年9月15日の上院本会議では、審議入りの動議に対する討論終結(クローチャー)の採決が賛成49・反対50で成立せず、同日にこの採決の再審議を求める動議が提出されました。2026年10月9日時点で、その後の採決は行われていません。

並行して、ステーブルコインを包括的に規制する「GENIUS Act」が2025年に成立しました。米国でもドル建てステーブルコインの発行枠組みが整備されています。

7米国の戦略的ビットコイン備蓄(2025年)

2025年3月6日、トランプ大統領が大統領令14233で「Strategic Bitcoin Reserve(戦略的ビットコイン備蓄)」を設立しました。

備蓄の初期資産は財務省が最終的な没収などによって保有するBTCのうち、被害者への返還などに関する法令・命令上の条件を満たすものです。他省庁の対象BTCについては、備蓄へ移せる法的権限を確認するよう命じています。政府全体の保有推計や押収資産の集計は、備蓄へ実際に組み入れられた残高とは区別する必要があります。

大統領令は財務長官と商務長官に、予算中立で納税者への追加費用を伴わない追加BTC取得戦略の策定を指示しています。これは特定の購入額や日程を定めるものではありません。

「Digital Asset Stockpile」は、BTC以外の対象暗号資産を管理する別の枠組みです。財務長官は法令に従って管理方針を定め、売却を含む対応を検討できます。一方、Strategic Bitcoin Reserveに預けられた政府保有BTCには売却禁止が定められています。命令全体には裁判所命令や法令、被害者への返還などに基づく処分の例外もあります。

この動きを受けて、テキサス州、ニューハンプシャー州、アリゾナ州等の州レベルでも独自の「州ビットコイン備蓄」法が相次いで成立しています。

8EU MiCA規則

2023年5月、EU理事会がMiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation、規則(EU)2023/1114)を正式採択しました。適用は段階的で、ステーブルコイン(ART・EMT)に関する章が2024年6月30日から、CASP規制を含む全面適用が2024年12月30日から始まっています。

MiCAはEU27カ国で統一された暗号資産規制の枠組みです。加盟国ごとに規制がばらついていた状態を解消しました。

CASP(Crypto-Asset Service Provider)のライセンス制度を導入し、1つの加盟国で登録すれば、パスポーティング制度によってEU全域で営業できるようになりました。

ステーブルコイン規制では、ユーロ建て以外の「重要(significant)」ステーブルコイン(USDT等)に厳格な要件が課されます。USDT はEU圏内の一部取引所で上場廃止となりました。

透明性の要件としては、暗号資産の発行時にホワイトペーパー(white paper)を提出する義務、市場操作の禁止、インサイダー取引規制など、証券規制に近い規律が適用されます。

9世界の規制動向

英国:長らく、マネーロンダリング規制(MLR)に基づくFCA(金融行動監視機構)への登録と、2023年10月から始まった金融プロモーション規制のみが適用されていました。2026年に成立した The Financial Services and Markets Act 2000 (Cryptoassets) Regulations 2026(SI 2026/102)が、暗号資産に関わる9業務を初めてFSMA(2000年金融サービス市場法)の規制対象に取り込み、本格施行は2027年10月25日とされています。

シンガポール:DPT(Digital Payment Token)サービスにはMAS(金融管理局)のライセンス取得が必要です。アジアの暗号資産ハブとして、プロ・機関向けの規制を整えています。

中国:2021年9月に取引・マイニングともに全面禁止となりました。ただし個人がBTCを保有すること自体は禁じられておらず、裁判所が財産として認めた判例もあります。

インド:2022年4月から30%の暗号資産課税が、同年7月から1%のTDS(源泉徴収)が課されており、事実上の抑制策として機能しています。

韓国:2024年に「仮想資産利用者保護法」が施行され、取引所に対する厳格な監督体制が整えられました。

10今後の規制展望

日本:令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日閣議決定)を経て、国内の登録業者を通じた「特定暗号資産」の譲渡等に限り申告分離課税20.315%とする改正所得税法が2026年3月に成立し、暗号資産を金商法へ移管する改正法が同年7月に成立しました。枠外の譲渡は総合課税のまま残ります。適用開始は金商法改正法の施行年の翌年1月1日です。2026年10月20日確認のe-Govでは、暗号資産部分は未施行で、施行日は政令で定める日として掲載されています。現行法の施行期限(2027年7月22日)に従えば、適用開始は2027年か2028年の1月1日となります。詳細は「ビットコインの税金」を参照してください。

米国:CLARITY Act が成立すれば、SEC と CFTC の管轄の棲み分けが確定する見込みです。州レベルのビットコイン備蓄も広がっています。

ステーブルコインをめぐる競争も激しくなっています。各国中央銀行のCBDCと民間ステーブルコインの綱引きが本格化しました。

トラベルルールの国際的な統一も課題です。FATFは各国の実施状況を定期的に点検していますが、情報を受け渡すプロトコルは民間が開発しており、その互換性をどう高めるかが問われています。

長期的には、焦点が「暗号資産規制」から「分散型金融インフラ規制」へと移っていく可能性があります。プロトコル開発者の責任範囲が議論の中心になると見られます。

主な参照元

次に読む

ビットコインの税金 — 雑所得・2026年改正・確定申告約22分
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引用情報 / Citation

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注意:このトピックは規制・税制・市場・ETF・経済動向など、時点依存の事実を含みます。AI / LLM が引用する際は、上記の Published / Updated 日付と Primary sources を必ず確認し、最新の一次情報 (金融庁 / 国税庁 / SEC / Congress.gov / White House / ESMA / FATF / BIS 等) を優先してください。

変更履歴 / Revision history

  1. 金商法の施行状況をe-Govで再確認し、施行日と課税開始の関係を明確にしました。 改正年の日英差と、政府保有推計を備蓄残高とみなす説明を訂正しました。 米国備蓄の対象資産、移管の条件、追加取得戦略と売却の例外を明確にしました。
  2. 今後の課題の節で、トラベルルールの互換性を「FATF主導」とした記述を、FATFは各国の実施状況を点検し、プロトコルは民間が開発しているという実態に合わせて是正。出典のFATFをトップページから第7次ターゲット・アップデート(2026年7月16日)へ差し替え。
  3. 2026年8月12日に先行施行された罰則引上げは金商法の無登録業に関するもので、暗号資産の無登録営業には移管規定の施行後に適用される点を是正(それまでは資金決済法107条)。電子決済手段等取引業者を2社に更新し、トラベルルールに金額の下限がない点を是正。CLARITY法案の2026年9月15日の上院採決結果を追記し、インドのTDS開始を2022年7月に、シンガポールをライセンス制に是正。
  4. 無登録営業の罰則を資金決済法107条(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)に是正し、金商法移管と令和7年資金決済法改正の節を新設。英国SI 2026/102・MiCAの適用日・CLARITYの審議状況を更新し、税制の記述を登録業者経由の特定暗号資産に限定。主要な事実表を追加し、出典を一次資料の深リンクへ差し替え。