解説記事 / supply
ビットコインの発行スケジュール
2,100万枚の上限に向かう精密な発行計画。供給スケジュール、失われたコイン、2140年の最終発行まで。
約9分
記事概要
2140年頃まで続く発行scheduleが、最初のcodeに刻まれています。未来の日付は揺れても、減り方の規則は公開されています。
理解の手がかり
210,000歩ごとに段差が半分になる階段を想像すると、新規発行の合計が上限へ近づいていく数学を目で追えます。
比喩の限界
各blockの時間が変動するため最終時期は概算です。紛失coinの量も確定できず、供給上限は価値を保証せず、subsidy後のfee市場も未解決です。
codeで分かる未来と、人間の需要やminer行動に依存する未来を切り分けられます。
用語で迷ったら →この記事の目次6章
01総供給量:なぜ正確に2,100万ではないのか
ビットコインの最大供給量は「2,100万BTC」として広く知られていますが、正確には 20,999,999.9769 BTC です。理由は半減の計算方法にあります。ブロック報酬は satoshi という整数で管理されており、半減は「2で割る」演算ではなく、整数を1ビット右にずらす(右シフト)演算で行われます。割り切れない端数はこのとき切り捨てられ、その分は永久に発行されません。
切り捨てが効き始めるのは報酬が小さくなる第11期(Era 11)以降で、そこから最後まで積み上がる不足分の合計が約0.0231 BTCです。21,000,000 との差はこれで説明がつきます。なお最後のブロック報酬に微小な端数が残るわけではなく、報酬はきれいに 0 satoshi に到達します(その仕組みは次節のとおりです)。
ビットコインの最小単位は1 satoshi(0.00000001 BTC)です。つまり、ビットコインの最大供給量を satoshi で表すと 2,099,999,997,690,000 satoshi——約2,100兆個の利用可能な単位があります。
「21,000,000」は、210,000ブロック × 初期報酬50 BTC × 幾何級数の和(n = 0 から無限大までの Σ 1/2^n = 2)から導かれます。この数学的な美しさは、サトシ・ナカモトの設計思想を反映しています。
02報酬スケジュール:33回の半減期
ブロック報酬は210,000ブロック(約4年)ごとに半減します。合計33回の半減を経て、最終的にブロック報酬は0 satoshi になります。
Era 1(ブロック0〜209,999):50 BTC/ブロック → 合計10,500,000 BTC
Era 2(ブロック210,000〜419,999):25 BTC/ブロック → 合計5,250,000 BTC
Era 3(ブロック420,000〜629,999):12.5 BTC/ブロック → 合計2,625,000 BTC
Era 4(ブロック630,000〜839,999):6.25 BTC/ブロック → 合計1,312,500 BTC
Era 5(ブロック840,000〜1,049,999):3.125 BTC/ブロック → 合計656,250 BTC ← 現在
最終的にブロック6,930,000(Era 34、2140年頃)で報酬が0になり、新規発行が完全に停止します。
03供給マイルストーン
2009年末:約162万BTC(初年度の発行分。2009年12月31日時点のブロック高は32,489)
2012年(第1回半減期):約1,050万BTC(全体の50%)
2016年(第2回半減期):約1,575万BTC(全体の75%)
2020年(第3回半減期):約1,837万BTC(全体の87.5%)
2024年(第4回半減期):約1,968万BTC(全体の93.75%)
2026年3月:約2,000万BTC(全体の約95.2%)
2026年8月:約2,007万BTC(全体の約95.6%) ← 現在
2028年(第5回半減期予定):約2,034万BTC(全体の96.875%)
2140年頃:20,999,999.9769 BTC(最終値)
ブロックが正確に10分間隔で生成されると仮定した場合、最後のビットコインは2140年頃に採掘される見込みです。ただし実際の平均間隔は約9.62分とやや速く、この「ずれ」が17年間積み重なっているため、この推定に日単位の精度はありません。年単位の概算として読んでください。
04失われたコイン:実質的な供給量
理論上の最大供給量と実際に使用可能なコインの量は異なります。多くのビットコインが永久に失われています。
ジェネシスブロック:最初の50 BTCはプロトコルの技術的制約により使用不可能です。サトシ・ナカモトが意図的に設計したのか、コード上の特殊ケースなのかは議論があります。
ブロック124,724:マイナーがミスにより1 satoshi 少ない報酬を請求。この1 satoshi は永久に失われました。
ブロック501,726:不適切な実装により12.5 BTCが破壊されました。
ブロック91,722/91,880 と 91,812/91,842:重複するトランザクションIDにより、合計100 BTCが使用不可能になりました。
これらの技術的な損失に加え、秘密鍵を紛失したウォレットや、使用不能なアドレスに送られたコインもあります。ブロックチェーン分析会社Chainalysisが2017年11月に公表した推計では、永久に失われたビットコインは278万〜379万BTC(当時の発行済み量の17〜23%)とされました。
ただしこれは「長期間まったく動いていないコインは失われたとみなす」という前提に基づく統計的推計であり、長期保有(ホドル)と紛失を技術的に区別する方法は存在しません。時点も2017年と古く、その後に紛失した分も、諦められていたウォレットが復旧した分も反映されていません。しばしば引用される「300〜400万BTC」という数字は確定値ではなく、この一つの推計に由来する概数として読む必要があります。
052140年以降:手数料経済への移行
最後のビットコインが採掘された後、マイナーの収入源はブロック報酬から取引手数料に完全移行します。
ホワイトペーパー第6節「Incentive」には、あらかじめ定められた枚数のコインが流通に入りきった後は、インセンティブを完全に取引手数料へ移行させ、インフレをまったく生じさせない形にできる、という趣旨の記述があります(原文: "Once a predetermined number of coins have entered circulation, the incentive can transition entirely to transaction fees and be completely inflation free.")。この一文が、報酬ゼロ後もマイニングが続くと考えられている根拠です。
この移行がスムーズに行われるかは、ビットコインの長期的な安全保障にとって重要な課題です。取引量と手数料が十分なレベルに達するかどうかが鍵となります。
Lightning Networkなどのレイヤー2ソリューションが普及すると、メインチェーンの取引数が減少し、手数料収入に影響を与える可能性もあります。この問題は「セキュリティバジェット問題」として活発に議論されています。
06分割可能性とデフレ設計
ビットコインは8桁(小数点以下8桁)まで分割可能です。1 BTC = 100,000,000 satoshi。これにより、コインが失われても残りのコインが細分化されて流通を維持できます。
将来的には、プロトコルのアップグレードによりさらに小さな単位への分割も技術的に可能です。Lightning Networkでは既に millisatoshi(1/1000 satoshi)が使用されています。
コインが失われると、使用可能なコイン全体に占める1枚あたりの割合は必ず増えます。これは算術上そうなるという話で、例外はありません。
ただし「割合が増える」ことと「価格が上がる」ことは別の話です。後者が成り立つのは需要が変わらないという前提を置いた場合に限られ、需要が減れば供給が細っても価格は下がります。「喪失は保有者にとっての値上がりだ」という言い方は、この前提を省略した表現である点に注意してください。本サイトは価格の予想を行いません。
この特性はしばしば金と比較されますが、ビットコインの供給スケジュールは金よりもはるかに厳密かつ予測可能です。
主な参照元
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引用情報 / Citation
- Title
- ビットコインの発行スケジュール
- Source
- ビットコイン図書館 (bitcoin.ne.jp)
- Canonical URL
- https://bitcoin.ne.jp/learn/supply
- Author
- KK siiiiiixth
- Topic
- supply
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変更履歴 / Revision history
- 2009年の発行量を実測値(約162万BTC)に是正。上限が端数になる機序を satoshi 整数の右シフト切り捨てとして書き直し、33回で報酬0という次節との矛盾を解消。紛失コイン推計に調査主体・時点・定義を併記し、鉤括弧付きサトシ発言をホワイトペーパー第6節の原文+要約に差し替え。