ビットコインの税金 — 雑所得・2026年改正・確定申告
日本の暗号資産税制を一次情報で整理。雑所得・総合課税の現行ルール、課税タイミング、損益計算、確定申告の実務、そして2026年改正(申告分離課税20.315%・所得区分の変更)で何が決着し、何がまだ政令待ちなのかまでを中立的に解説。
約18分
なぜ税金を独立して扱うのか
- 暗号資産の税金は、価格やテクノロジーの話とは別の、生活に直結する制度の話です。日本では税率も申告方法も、株式やFXとは異なる独自の枠組みが長く使われてきました。
- 2026年はその枠組みが大きく動いた年です。申告分離課税を含む改正所得税法が3月に成立し、暗号資産を金融商品取引法(金商法)へ移す改正法が7月に成立しました。ただし「新しい税率がいつから誰に効くのか」は条件付きで、報道や解説では混同されがちです。
- 本ページは2026年8月時点の一次情報(国税庁・財務省・金融庁・国会)に基づく制度の解説です。個別の税務助言ではありません。
- 自分の取引にどう当てはまるかの判断、申告書の作成、節税の可否については、税理士または所轄の税務署・国税庁の相談窓口に確認してください。本文の数値は執筆時点のもので、今後の政令・通達により変わり得ます。
現行制度 — 雑所得と総合課税
- 以下は、後述する改正の適用開始日より前に適用される現行制度です。改正後は所得区分そのものが変わるため、この節の枠組みは恒久的なものではありません。
- 国税庁のFAQ(2-2、令和7年12月更新)は、暗号資産取引により生じた利益は所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されるとしています。
- 雑所得は総合課税です。給与などほかの所得と合算したうえで、所得税の累進税率5〜45%、住民税10%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。合計の最高負担は約55.9%(所得税45%+復興特別所得税0.945%+住民税10%)で、慣用的には「最高約55%」と表現されます。なお復興特別所得税の2.1%は令和8年分までで、令和9年分以後は復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1%となり、所得税額に対する上乗せの合計2.1%は変わりません(国税庁Q&A、令和8年5月)。
- 例外があります。その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、取引に係る帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ業務に係る雑所得に区分されます。
- 雑所得の計算上生じた損失は、給与所得など他の所得と通算できません。所得税法69条が通算を認めるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失に限られ、雑所得はそこに含まれないためです。
- 翌年以降への損失の繰越しも、現行制度では認められていません。上場株式等の20.315%・3年繰越と比べて不利であることが、長く制度改正の論点になってきました。
課税されるタイミング
- 課税は「持っているだけ」では起きません。含み益を抱えたまま保有している限り所得は認識されず、暗号資産を手放したり受け取ったりした時点で課税関係が生じます。
- 国税庁FAQが挙げる代表的な類型は、売却(BTC→円)、商品の購入に暗号資産を使った場合、暗号資産同士の交換(BTC→ETH)、そして寄附です。交換や決済も「その時点の時価で売った」と扱われる点が、最も見落とされやすい部分です。
- マイニング、ステーキング、レンディングにより暗号資産を取得した場合は、取得時点の価額(時価)が総収入金額に算入され、それに要した費用が必要経費になります(FAQ 1-7)。この取得時の所得は「譲渡」ではないため、後述する分離課税の枠には入りません。
- 分裂(ハードフォーク)で新たに誕生した暗号資産を取得した場合、その時点では取引相場が存在せず価値を有していなかったと考えられるため、取得価額は0円とされ、取得時には課税されません(FAQ 1-6)。課税は売却・使用した時点に繰り延べられ、そのとき売却代金の全額が所得になります。
- エアドロップについては、FAQに独立した項目が置かれていません。実務では、受け取った時点で取引相場が存在するかどうかで、取得時に収入を認識するか、分裂と同様に0円で引き継ぐかが分かれます。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。
損益の計算方法
- 所得金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて求めます。必要経費には譲渡原価や売却時の手数料のほか、売却のために直接必要と認められる部分に限り、回線利用料やパソコンの減価償却費も含まれます。
- 譲渡原価の基礎となる取得価額は「総平均法」または「移動平均法」で計算します。暗号資産の種類ごとに選定し、初めて取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出します。
- 届出をしなかった場合の法定評価方法は総平均法です。あとから変更するには変更承認申請書の提出と税務署長の承認が必要で、変更前の方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないと却下されることがあります。
- 国内の暗号資産交換業者からは「年間取引報告書」が交付され、年中購入数量・購入金額・売却数量・売却金額が記載されています。国税庁は移動平均法用と総平均法用の計算書(Excel)も公開しています。
- 取得価額がどうしても分からない場合には、売却価額の5%相当額を取得価額とすることが認められています。ただしこれは記録が残らなかった場合の救済であり、通常は納税者にとって不利になります。
- 複数の取引所を使ったりDeFiに触れたりすると、手計算は現実的ではありません。暗号資産の損益計算に対応した会計ソフトや計算サービスが各社のCSVを取り込んで自動化していますが、本サイトは特定の事業者やサービスの推奨は行いません。
確定申告の実務
- 給与所得者は、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えるときに確定申告が必要です(国税庁タックスアンサー No.1900)。給与収入が2,000万円を超える人は、金額にかかわらず申告が必要です。
- いわゆる「20万円ルール」は所得税の話であり、住民税に同じ免除はありません。所得税の確定申告をしない場合は、お住まいの市区町村に住民税の申告を別途行う必要があります。
- 申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日まで(土日祝にあたる場合は翌開庁日)です。国税庁の確定申告書等作成コーナーからe-Taxで提出できます。
- 手元に用意するものは、各取引所の年間取引報告書と取引履歴CSV、送受金の記録、必要経費の領収書、評価方法の届出内容です。海外取引所や個人間取引では報告書が交付されないため、自分で記録を保全する必要があります。
- 一定の所得・資産規模の人は、財産債務調書に暗号資産を記載します(FAQ 7-1)。なお暗号資産は、国外の取引所に置いていても「国外にある財産」とはされないため、国外財産調書の対象外です(FAQ 7-3)。
- 2026年1月1日からは、OECDの暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく非居住者の暗号資産等取引情報の自動的交換制度が日本でも施行されています。国境をまたぐ取引の透明性は高まる方向にあります。
2026年改正 — 何が決まり、いつから効くのか
- 2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」は、暗号資産の譲渡等による譲渡所得等について、他の所得と分離して20%(所得税15%・個人住民税5%)の税率で課税する方針を示しました。復興特別所得税分を加えると20.315%になります(0.315%=15%×2.1%。令和9年分以後はこの2.1%が復興1.1%+防衛1%の内訳に変わりますが、合計は同じです)。
- この内容は「所得税法等の一部を改正する法律」に盛り込まれ、2026年3月31日に成立・公布されました。租税特別措置法に特定暗号資産の申告分離課税とその繰越控除の規定が創設されており、分離課税は方針ではなく法律として確定しています。個別の条番号や政省令レベルの細目は、公表された法令で確認してください。
- 見落とされやすいのが所得区分の変更です。改正前は雑所得でしたが、改正後は暗号資産の譲渡による所得が譲渡所得として整理され、そのうち特定暗号資産を対象業者へ譲渡等した分が申告分離、それ以外は総合課税の譲渡所得になります。大綱⑥が「総合課税の譲渡所得の基因となる暗号資産」という表現を使っているのはこのためです。
- 分離課税につながる経路は3系統あります。現物の譲渡(譲渡所得として20.315%分離)、特定暗号資産に係る暗号資産デリバティブ取引(雑所得のまま、先物取引に係る雑所得等の課税の特例と3年繰越控除の対象に追加)、そして特定暗号資産を投資対象とする投資信託の受益権(投資信託及び投資法人に関する法律施行令の改正を前提に、一般株式等の枠へ)。現物とデリバティブは繰越控除の枠が別である点に注意が必要です。
- 対象範囲は限定されます。分離課税が適用されるのは、居住者等が、暗号資産取引業を行う者に対して、名称が金融商品取引業者登録簿に登録された「特定暗号資産」を譲渡等(当該業者への売委託による譲渡を含む)した場合です。判定されるのは譲渡時の経路であり、取得経路は問いません。マイニングやエアドロップで取得した特定暗号資産でも、国内の登録業者に譲渡すればその譲渡益は枠内に入ります。一方、海外取引所・DEX・個人間取引での譲渡は枠外に残り、マイニング等の取得時の収入計上(FAQ 1-7)も譲渡ではないため総合課税のままです。
- 損失については、控除しきれない金額を翌年以後3年内の各年分の「特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額」から繰越控除できます。繰越先は特定暗号資産の枠内に限られ、上場株式等の譲渡損益と通算する規定は置かれていません。
- 枠外に残る暗号資産にも手当てが入りました。譲渡所得の特別控除を適用しない、5年を超えて保有した資産の2分の1課税を適用しない、他の総合課税の対象所得との損益通算を適用しない、という3点です。譲渡所得に区分され直すからこそ必要になった打ち消し措置であり、「すべての暗号資産が20%になる」という理解は正確ではありません。
- 適用開始日は「金商法の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日」と定められています。その金商法改正法は2026年7月15日に成立、7月23日に公布され、暗号資産部分の施行は公布の日から1年を超えない範囲内で政令が定める日(最も遅くて2027年7月22日)とされています。2026年内に施行されれば適用開始は2027年1月1日、2027年に入ってからの施行なら2028年1月1日です。2026年8月時点で施行期日を定める政令は公布されておらず確定していませんが、法律上、2028年1月1日より後になることはありません。
法人が保有する場合
- 法人が事業年度終了時に保有する暗号資産のうち「活発な市場が存在する暗号資産」は、原則として時価法で評価し、評価額と帳簿価額の差額を益金または損金に算入します(法人税法61条)。含み益に課税されるため、事業会社が長期保有する際の障害とされてきました。
- 令和5年度改正で、自己が発行し発行時から継続して保有する「特定自己発行暗号資産」が期末時価評価の対象外になりました。
- 令和6年度改正では、他者が発行した暗号資産でも、一定の移転制限が付され、暗号資産交換業者が認定資金決済事業者協会を通じてその旨を公表する手続きを行ったもの(特定譲渡制限付暗号資産)は、時価法と原価法の選択制になりました。選定しなかった場合の法定評価方法は原価法です。
- 消費税についても令和8年度税制改正の大綱で見直しが示されています。暗号資産の譲渡を「有価証券に類するもの」の譲渡として引き続き非課税とし、課税売上割合の計算上は対価の額の5%相当額を算入する等の措置です。ただしこれは所得税の分離課税と異なり、2026年3月成立の改正法には含まれていない大綱段階の項目で、今後の税制改正法での措置が見込まれる段階です。適用は金商法改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡等とされており、法人に限らず消費税の課税事業者一般に及びます。
- 法人課税は個人とは規律が大きく異なります。法人での保有・運用を検討する場合は、期末評価と会計処理を含めて税理士に相談してください。
相続と贈与の基礎
- 暗号資産は「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」に当たるため、相続・遺贈・贈与により取得した場合には相続税または贈与税の課税対象になります(FAQ 4-1)。
- 評価方法は、活発な市場が存在する暗号資産であれば、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格によります(FAQ 4-2)。外国通貨に準じた扱いです。活発な市場が存在しない場合は、内容・性質・取引実態を勘案して個別に評価します。
- ここで問題になるのが、秘密鍵やシードフレーズが遺族に伝わっていないケースです。課税関係は評価通達に沿って判断される一方、鍵がなければ実際には動かせません。技術的な喪失と税務上の財産の存在が自動的には連動しない、というのが実務上の緊張点です。
- 対策の中心は税制ではなく相続の設計そのものにあります。どの取引所・どのウォレットに何があるかの一覧、鍵の保管方法、家族への伝達手段を、生前に文書として残しておくことが出発点になります。
- 相続税の税率や基礎控除、申告期限(原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)といった一般論は本ページの範囲を超えます。個別の相続案件は必ず税理士に相談してください。
主要国との比較
- 各国の扱いは大きく異なります。ここでは代表的な国の枠組みを、2026年8月時点の公表資料に基づいて簡潔に並べます。細部は毎年変わるため、実際の判断は各国当局の資料で確認してください。
| 国・地域 | 個人の売却益の扱い | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本(現行) | 雑所得・総合課税 | 最高約55.9%、損益通算・繰越不可 |
| 日本(改正後) | 特定暗号資産は申告分離課税 | 20.315%、損失3年繰越、対象が限定 |
| 米国 | 財産(property)として譲渡損益 | 保有1年超は長期キャピタルゲイン |
| ドイツ | 私的売却取引(所得税法23条) | 1年超保有の売却益は非課税(見直し提案あり) |
| シンガポール | キャピタルゲイン課税なし | 事業と評価される場合は所得課税 |
- 米国では内国歳入庁(IRS)がデジタル資産を通貨ではなく財産として扱い、売却・交換・処分の時点で譲渡損益を認識します。保有期間1年を境に短期と長期で税率が変わる点が、日本にはない特徴です。
- ドイツは所得税法(EStG)23条の私的売却取引として扱い、1年を超えて保有した暗号資産の売却益は課税されません。ただし2026年7月にドイツ連邦政府が2027年度予算の基本方針でこの1年ルールの廃止と資本所得化の方針を示しており、2026年8月時点では法案化されていない検討段階です。
- シンガポールにはそもそもキャピタルゲイン税がなく、売買が事業と評価される場合に所得課税が及びます。
- 比較して見えるのは、「暗号資産をどの箱に入れるか」で税負担が決まるということです。日本の2026年改正も、資金決済法上の決済手段から金商法上の金融商品へ箱を移し替える作業に、税制が連動した結果でした。
まとめ — 決着済み・見込み・未定
- 情報が錯綜しやすい領域なので、2026年8月時点で何がどの段階にあるかを整理します。
| 論点 | 状態 | 根拠・条件 |
|---|---|---|
| 申告分離課税20.315%の法制化 | 決着済み | 改正所得税法が2026年3月31日に成立・公布 |
| 所得区分が雑所得から譲渡所得へ | 決着済み | 同改正法。枠外は総合課税の譲渡所得 |
| 特定暗号資産デリバティブの分離課税化 | 決着済み | 雑所得のまま先物取引の課税の特例へ追加 |
| 暗号資産の金商法への移管 | 決着済み | 改正法が2026年7月15日成立・7月23日公布 |
| 損失の3年繰越(特定暗号資産内) | 決着済み | 上場株式等との通算規定は置かれていない |
| DEX・個人間取引が枠外 | 決着済み | 暗号資産取引業を行う者への譲渡等が要件 |
| マイニング等の取得時の収入 | 総合課税のまま | 譲渡ではないため分離課税の対象外 |
| 適用開始は2027年か2028年の1月1日 | 見込み | 施行期日政令が未公布。施行期限は2027年7月22日 |
| 特定暗号資産の具体的な範囲 | 未定 | 登録簿の運用と政令・通達待ち |
| 消費税の非課税区分の付替え | 見込み(未立法) | 大綱段階。金商法改正法施行の翌年から |
- 海外取引所の扱いは条件付きです。国内で暗号資産取引業の登録を受けた事業者を経由すれば枠内になり得ますが、登録のない海外業者への譲渡は枠外に残る見込みです。
- 「暗号資産の税金が20%になった」という短い見出しは、法律としては正しく、いつ・誰に効くのかという点では不正確です。適用開始日は金商法改正法の施行日に連動し、対象も登録業者を通じた特定暗号資産の譲渡等に限られます。
- 一次情報を自分で確認したい場合の入口は、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」と計算書、財務省「令和8年度税制改正の大綱」と国会提出法案のページ、金融庁の法律案説明資料、参議院の議案情報です。いずれも本ページ末尾の参考リンクからたどれます。
- 繰り返しになりますが、本ページは制度の解説であり、個別の税務助言ではありません。自分の申告については税理士または所轄の税務署にご相談ください。
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引用情報 / Citation
- Title
- ビットコインの税金 — 雑所得・2026年改正・確定申告
- Source
- ビットコイン図書館 (bitcoin.ne.jp)
- Canonical URL
- https://bitcoin.ne.jp/learn/tax
- Author
- KK siiiiiixth
- Topic
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